吉村昭著「高熱隧道」
知人の勧めで手に取り、すっかり度肝を抜かれました。
舞台は、黒部渓谷にダムと水力発電所を建造するための、トンネル(隧道)工事です
冒頭から巻末まで、死の暗い影が付き纏いつづけます。
惨たらしい屍体や、想像を絶するほど劣悪な労働環境が何度もでてきます。だけどそんな、残酷なこともざくざく描写してしまう吉村さん。
綿密な下調べあっての作品なんだろうと、ひしひし感じました。それでいて、史実ばかり並べて重たくなることもなく、人間のしぶとさ・純朴さと醜さみたいなものが巧みに描かれて、読み手の意識を離しません。
ドボ女(土木系女子。私のような!)もそうでない方も、一度は手に取って見てほしい一冊です。
読み終わってぼうっとしながら、次に読みたい吉村本はこれ。
山(=脅威としての自然)に挑む人間模様として、こっちも気になる。